Top / 歯科医師量産の失敗は続く

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最近になって、医療は共有財であるという人が多い。

公共財の定義にせよ共有財の定義にせよ、排除性が低いのは同じであるが、
公共財というのは競合性が低く、共有財は競合性が高い。

救急医療や小児・産科医療の現状を慮れば、
医療が共有財であるということに納得のいく人も多かろう。

『飢饉がひき起こす暴動では、一般大衆はパンを求めるのが普通だが、
その際に彼らが用いる手法といえば、こともあろうにパン屋を
破壊することである(※1)』というオルテガの警句のような情勢もあったにせよ、
医療提供者と患者が話し合い、折り合う環境が作られつつあることも事実である。

また医療費なるものに保険料や税金が入っているのであれば、医療費自体も共有財で
あるに他ならないであろう。

ところで歯科は、このような共有財や共有地の問題を語る時、
全く異なった様相を呈する。多くが診療所の開設者である歯科医にとっては、
上述したようなことは全く無関係で、それどころか乱獲による悲劇を言って
聞かせる相手は歯科医なのである。

市場への参加なるものは自由意志に基づくが、参入過剰によって
市場の均衡点から大きく乖離すれば、市場は最適な資源配分を実現できなくなり、
これを市場の失敗という。また公共性の高いものに関して非効率な過剰供給を
なしたとすれば、それは政府の不作為や失敗と呼ばれるものである。

歯科医院数が立派に過剰であると言われ始めてから既に二十年以上が経過している。

新規開業が雨後の筍の如くであることについて、よく自分だけは大丈夫だろう
との考えで参入してくるといわれるが、この十年程の状況に関しては、
勤務医であれば生活の持続的な保障は見込めないにせよ、開業してしまえば
他の開業医と条件は等しくなるとの誤解が生じたのは、金利というひとつのリスクが
ないに等しく、恰も他のリスクが相殺されたような錯覚を起こしたことが大きい。

いずれ開業してしまえば何とかなるという甘い考えがあり、そもそもの入口で、
すなわち大学歯学部の門扉が開け放たれて居れば、新規参入は止むことを知らず、
軈て全てを市場に任せる他は術がなくなるということになってしまう。

そしてこのことはもう既に露呈していて、実際のところ後の祭りと言ってしまえば
その通りである。国家資格であるのに(またあるからこそ)失業や経済的困窮の
可能性が極めて高く、それがこともあろうに医療者であるというなら、
国民にいったい如何なるものを及ぼすことになるのかは、早急に
論点を整理せねばならなくなっている。

中医協の審議員も務められた伊東光晴京都大学名誉教授は
「歯科医師過剰問題への処方箋」を「歯界展望」に寄稿された
翌2000年に著作「日本経済の変容(岩波書店)」の中の
「すべてを市場にまかせてよいのか―人口減少時代への突入」において
『需要拡大策が意味を持たない分野が、二〇世紀の後半、すでにあらわれている
(※2)』として歯科医師の過剰供給に触れている。

一般読者向けに著された本の中で、需給ギャップの代表例として
歯科医が取り上げられているのである。ここでは歯科医療の諸問題について
微に入り細を穿つことが述べられているわけでないにせよ、
単に増え過ぎた歯科医の捌け口を求めるのが本音の需要拡大策が
全く何の反論にもならないことは明白になる。そして『日本は市場主義の
無計画な国、欧米は計画的な国なのか(※3)』と結ばれるこれが書かれたのは、
今からもう十年近く前のことなのである。

氏の予見が的中したともいえる今日の経済情勢の中、因みに歯科関係者にとって
耳に痛いこの著作のサブタイトルは「倫理の喪失を超えて」であった。

(※1)【大衆の反逆/オルテガ著 桑名一博訳(白水社 1991年)】P.103

(※2)【日本経済の変容/伊東光晴著(岩波書店 2000年)】P.104

(※3)同書P.109

April 21, 2009 / R’R wrote


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