Top / 147 参議院 国民生活・経済に関する調査会 3号 平成12年03月01日

○中原爽君
 自由民主党の中原でございます。
 塩野谷先生にお尋ねをいたします。
 出生率のことでございますけれども、先生の御説明ですと、出生率の低下を生み出した傾向というのは、家族や結婚あるいは出産についての価値観の変化というふうにとらえるのではなく、あくまでも経済発展に伴う客観的な機会の拡大というふうにおっしゃっておられまして、出生率の低下は男女平等化の差し当たっての代償である、こう御説明をいただいております。
 そうしますと、この男女共同参画社会が成熟に向かって動いていくという段階になれば、差し当たってということがなくなって恐らく出生率が回復する傾向が出るのかどうか、ここをお尋ねしたいというふうに思います。
 もう一点は、エージレスの社会が、これもお年寄りあるいは若者の共同参画という社会が進行いたします中で、現在言われております労働人口の幅というのが、エージレスの共同参画という中では、共同参画が進めば労働人口の幅が拡大するだろうと思いますし、あるいは男女共同という意味では労働人口の中の質も変わるんじゃないかというふうに思います。  そういう意味で、今後の労働人口と言われている部分と、それから現在一億二千万と言われております総人口とのかかわりを今後どのように考えたらよろしいでしょうか。何も一億二千万に戻せという意味ではないのではないかというふうに思います。
 この二点、お尋ねいたします。

○参考人(塩野谷祐一君)
 男女平等参画社会になれば出生率が回復するかというお尋ねですね。
 私どもの研究所で数日前に長く研究してきた仕事の発表会を行ったことがありますが、その中で一つのプロジェクトは、要するに人口と経済との相互作用を含んだようなマクロ経済モデルをつくり、政策にリンクするような変数を特に設けて研究したものが発表されました。
 要するに、先ほどの私の説明では就労と男女平等に社会に参画できるという面と、もう一つ育児、出産の面と二つあると申しましたが、現在のところはその両者がトレードオフの関係にあり、参画すれば育児、出産がおろそかになる、こういう社会システムになっているがゆえに出生率が落ちているわけです。
 しかし、人々は意識としては子供を持ちたいというふうに思っているわけです。しかし、世の中の教育費であるとかあるいは育児のいろいろな費用とか、あるいは豊かになったがゆえにさまざまな選択の可能性が出てきて、一つをやめるとどれだけのコストがかかるかという機会費用が高くなっているわけです。
 したがって、出生率の低下というところに今のところは答えが出ているわけですけれども、それを改善するためには、この二つのトレードオフ、就労と育児、出産の間のトレードオフ関係をなくすればどうなるかというのをシミュレーションモデルでやると、現在一・三八というような出生率に落ちていますけれども、モデルの上だけでその二つの変数が中立的になるように、つまりトレードオフ関係を持たないようになるとどうなるかということを仮にシミュレーションしてみると、一・七八の合計特殊出生率になるというような計算ができているわけです。これは、そういう施策を完全にやって、出産、育児という面とそれから社会参画の面とが矛盾を来さないような施策をさまざまにとればこういうことになるということですから、明らかにそれは出生率を回復させるのに役立つということになるわけですね。  人口減少は長い惰性を持った減少ですから、すぐにさっきの合計特殊出生率が大きくなれば人口がふえるとかいう問題ではなくて、今低下傾向への圧力がかかっていますから、それを覆すには膨大な力が必要でしょう。だから、そういう意味で、長期的なプロジェクトですけれども、その二つの側面を両立するような、例えば先ほどのスカンジナビアのような国は育児、出産と労働への参加というものを同時に満たすような、そういうパターンをとっているわけですから、できないわけではないというふうに思います。
 もう一つ、エージレスですか、もちろんこれは現在は女子もそれから老齢者も景気の不況下には余り相手にされないでしょうけれども、もう少し長期的に労働の不足経済に入っていることは確かですから、新しい労働力のパワーになるというふうに思われます。  しかし、時代は新しい周期を持った情報通信革命という経済の長期波動が働いているはずですから、それに乗るような人であるかどうかということになれば、それは若い人の方が有能であることは確かでしょう。しかし、社会の仕事はすべてITの仕事ではなくて、女子それから高齢者に適切な仕事があるというのは確かだというふうに思いますので、そういう雇用環境の整備というのはやがて可能になってくるというふうに思います。今の時点と、それから中期、長期的な労働不足経済との相違点はやがて解消されるのではないかというふうに思われます。

○参考人(高山憲之君)
 それじゃ関連して一言お答えしたいと思うんですけれども、経済的な豊かさを達成した国は、日本だけでなくて、アメリカだとかイギリスだとかヨーロッパ各国、あるいはオセアニアの国等いろいろあるわけですね。にもかかわらず、出生率が余り低下していない国といいますか、かつての四、五人生まれていた時代から二人になったという意味ではみんな出生率は低下したんですが、二人まで落ちた後、一・三とか一・二まで行っている国と、一・七とか二ぐらいでとまっている国と両極分化を起こしているわけですよ。この違いが何かというのを恐らく今後日本は考えていかなきゃいけないんではないかというふうに思っているわけですね。
 私は、おっしゃるように、男女共同参画社会を実現することは非常に重要だと思っております。ただ、それだけで十分かなというとそうは思っておりません。
 これは私は経済を専門する者で必ずしも得意な分野ではありませんけれども、どうも日本の社会は親離れとか子離れの時期が遅過ぎるといいますか、子供の自立ということに対する社会的な配慮というものを余りしてこなかった、そういう国ではないかというふうに私自身は思っているんですね。子供を鍛えるとか、親だけでなくて社会全体が鍛えるというようなことを本当にやっているのかということなんです。
 どちらかというと今は、子供を産みたくないあるいは結婚したくないというのはある意味ではエゴイズムの表明なんですね。自分の今の生活水準を維持したい、今より落ちたくない、苦労したくない、苦労するくらいだったら結婚しない方がいい、子供を産まない方がいいという人がふえてきているわけでありまして、ある意味でエゴイズムそのものなんですよ。個人がそのエゴイズムに基づいて選択したからしようがないと言っちゃっていていいのかというところが今問われているのではないかと思うんですね。
 確かに、子供を産み育てるのは本人やその夫婦の選択の問題であり、これはそのとおりなんですけれども、その選択が社会的に見て余り変な形にならないように誘導する、間接的に誘導する、あるいはインセンティブを与えることはして構わないわけなんですね。一体、日本の伝統だとか歴史だとかあるいは文化だとか、そういうようなものに対するある意味では教育だとか、親や社会、大人を通じてそういうことを本当にやっているのかということですね。そういう面が実は非常に手薄になっていて、非常にただエゴイズム的な願望だけがまかり通っているということではないかと思うんですね。
 ですから、私は意識の面を何もしなくていいとは実は思っていないわけです。教育や親がすべきことが本来もっとあるはずではないか、そこのところを我々は手抜きしているのではないかと。ただ単に若い女性が問題だとか若い男性が問題だというところではなくて、我々大人自身がいろいろ今まで手抜きをしてきたんではないかと。そこのところをもうちょっと議論しないと、この問題は前へ進まないんではないかなというふうに思っています。

○中原爽君 ありがとうございました。

○会長(久保亘君)
 次に、先般本調査会が行いました委員派遣につき、派遣委員の報告を聴取いたします。中原爽君。

○中原爽君
 委員派遣の報告を申し上げます。
 去る二月十六日から十八日までの三日間にわたって、久保会長、海野理事、沢理事、畑野理事、阿曽田理事、斉藤委員、長谷川委員、谷林委員、松岡委員と私、中原の十名は、山口県及び広島県において、少子化の現状と対策等に関する実情について調査してまいりました。
 以下、調査の概要を申し上げます。
 まず、山口県について報告いたします。
 同県は、平成十年に二十一世紀初頭を展望した県勢振興の新たな目標とその実現のための方策を示したやまぐち未来デザイン二十一を策定し、新しい県づくりを進めているところであります。
 同県では、昭和六十三年に普通出生率が全国最下位になったのを契機に、平成三年に出生対策委員会の設置、平成六年の児童環境づくり行動計画の策定等を行い、少子化対策を積極的に推進してきたとのことであります。また、平成十年には、委員二十名から成る少子化問題調査検討委員会及び少子化について考える県民ネットワーク会議を設け、広く県民からの意見を聴取して、この二月には十二項目にわたる提言が行われたとのことでありました。  これらの説明に関し、派遣委員からは、婚姻数の推移、出会いの場づくりや結婚奨励金制度、育児休業後の県庁職員の円滑な職場復帰、具体的な出生率の目標等の質問がなされました。
 なお、同県からは、本調査会に対し、子育てに係る経済的負担感の軽減や、地域の実情に即した少子化対策への支援などの要望が出されております。
 次に、視察先について申し上げます。
 まず、おおとり保育園を視察いたしました。三年前に開園した同保育園は、地域の福祉施設として、多様な保育ニーズにこたえるため、休日保育や延長保育、障害児保育などの特別保育サービスを行っております。
 また、同保育園は、地域子育て支援センターを併設し、子育て中の家庭を対象に、育児のためのサークル活動や育児相談を行っております。今後は、子供たちが、年齢に応じて思う存分遊ぶことのできるように園庭を整備することなどが課題であるとのことでありました。  次に訪れました山口県児童センターは、子供たちの健全育成を図るため、昭和五十六年に設立された児童館で、県内外から多くの利用者が訪れます。県下最大のプラネタリウムや平成九年に完成した夢広場は、中でも人気のある施設であります。
 次に、マツダ株式会社防府工場を訪れました。同工場は、省資源、環境保護、そして快適な労働環境に配慮した、人に優しい工場であります。また、従来、男性の職場とされてきた自動車の組み立てライン作業に女性も加わるなど、女性労働力の活用に積極的に取り組んでおります。
 女性も男性と同様に仕事という面ではほとんど差はなく、女性が加わることで仕事がより細かく正確に行われたり、また、女性でも楽に作業ができるよう、工程や工具を改善するなどといったメリットも生じているとのことでありました。
 引き続きまして、広島県及び広島市について報告いたします。
 同県は、国内外の人々や企業から評価される、魅力のある県づくりを目指して、県や市町村を通じた効率的な行財政システムの構築に取り組んでおります。
 少子化についての同県の状況を見ますと、昭和四十八年をピークに県内の出生児数が年々減少しており、合計特殊出生率も、平成十年には過去最低の一・四二となっております。このため、平成七年には、少子化対策を推進するための広島県児童環境づくり推進プランを策定したほか、平成九年には、少子・高齢化対策推進本部及び少子・高齢化対策室を設置し、少子・高齢化に全庁的な取り組みを行っております。また、育児相談など、出産、育児に当たる子育て家庭を支援するため、ひろしまこども夢財団を平成八年に設立するとともに、高齢者と子育て世代に配慮した福祉連携型住宅の整備や保育所の増改築なども進めております。
 広島市においても、未婚化、晩婚化を背景に出生率が低下傾向にあり、平成十年は過去最低の一・三七となっております。そこで、広島市児童育成計画を策定し、保育所の待機児童の解消を図るなど、子育てに優しい環境の整備に取り組んでいるとのことであります。
 これらの説明に関し、派遣委員からは、高齢者が子育てに協力できるような住環境の整備、少子化対策臨時特例交付金の活用、ひろしまこども夢財団の賛助会員の活動、子育てに係る経済的負担の内容等の質問がなされました。
 次に、同県における視察先について申し上げます。
 最初に、広島県女性総合センターを視察いたしました。同センターは、女性のリーダーとなるような人材を育成することを目的として、研修・情報・相談・交流の四つを柱として事業を展開しております。
 次に、県立広島病院についてであります。同病院は、県の基幹病院であり、救命救急センター、母子総合医療センターなどが新設され、母体、胎児、新生児を出産前後のリスクから守る周産期医療についての先進的な取り組みをしております。同病院では、わずか体重三百五十グラムに満たない新生児を障害なく育てた実績があるとのことであります。今後は、母体搬送を速やかに行うことのできるよう、ヘリコプターを積極的に利用するためのヘリポートの整備などが緊急の課題であるとのことでありました。
 次に、広島市児童総合相談センターについてであります。
 同センターの中心は、体と心の発達に課題を持つ子供の相談や早期発見、早期治療のほか、医学的な診断や判定と一貫した指導による援助を行っている児童療育指導センターであります。同センターでは、情緒障害児に対し、和太鼓の公演などの音楽療法的な指導が行われたり、児童虐待などが生じた場合の親に対する指導も行っております。
 次に、株式会社イズミを訪れました。
 株式会社イズミは、中国地方を中心に展開している総合スーパーで、平成十一年には均等推進企業女性少年室長表彰を受賞したほか、障害者雇用優良事業所として労働大臣表彰を受賞いたしました。同社では、育児休業について法律では一年のところを三年としているほか、一年間の介護休業も認めております。そのほか、休職した社員のスムーズな復職を図る研修や訓練プログラム、子供が三歳になるまでの育児短縮勤務制度、退職後五年間の再雇用制度の採用など、女性の働きやすい職場づくりに努めております。女性従業員からは、女性と男性の差を感じたことは余りなく、仕事も大変ではあるが、やりがいを持って働いているとの声が聞かれました。
 最後の視察先である広島大学では、原田学長御自身が我が国の出生率の低下に深い懸念をお持ちであり、母親教育や幼児教育の大切さについて力説されておりました。
 また、育児不安の解消を図るため、在宅で手軽な育児相談をすることができるよう、教育学部の教官が中心となって行っていた、インターネットを利用した子育て相談は、対応する教官の本務に影響が出るほど相談件数が増加したとのことでした。
 最後に、今回の派遣に当たりまして、山口県、広島県並びに関係者の皆様から、多大な御協力をいただきましたことに対し、厚くお礼申し上げて、報告を終わります。

○会長(久保亘君)
 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会


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Last-modified: 2008-02-28 (木) 09:31:13 (4592d)