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技工問題 「私の視点」

【始めに】

歯科技工士の問題は、法や制度の改善だけでは解決できないものがある。 それを明かして行きたい。

1.   技工問題と歯科医師と歯科技工士の関係は別個に考えるべきものがある。

技工問題とは、歯科医療の中での技工の位置付けや法的な制度、義務、専門職組織間の問題などだろうか。 それには、医療保険制度における歯科技工について言えば、保険点数と絡んだ技工料金問題や、業務内容、業務範囲などが含まれる。 これらの事は、歯科技工士の長時間労働や低収入、就労環境の悪化、業務や事業形態の変化、就労技工士の減少に深く関わり、複雑に絡んで当事者の視点や考えにすら纏まらぬ、定まらぬ迷走とも言うべき現状を生み出していると言える。

法は完全なものではない。 歯科医師法は身分法のようだが、歯科技工士法は業務法と聞いた覚えがある。 師と士の違いとでも言えばいいのだろうか。 しかし、歯科技工士法第一章には

 第1条 (この法律の目的)  この法律は、歯科技工士の資格を定めるとともに、歯科技工の業務が適正に運用されるよう に規律し、もって歯科医療の普及及び向上 に寄与することを目的とする。

とある。 これだけ読めば資格を定める身分法のようにも思える。 大体を読んでも、資格や免許についての条文が続き、業務については禁止行為、歯科技工指示書、指示書の保存義務、業務上の注意、守秘義務が規定されているにすぎない。

営業形態、事業形態、勤務形態は特に制約がないと思えるが、法的に曖昧であった部分に対し、平成17年3月17日厚生労働省医政局長名で発布された歯科技工所の設備構造基準と作成等及び品質管理指針によって、技工所において作成される歯科補綴物に対して、その品質や安全性に対しては明確な指針が示されたものと言える。

しかし、歯科技工の問題は制度や法だけでは解決できない、慣習的な部分、歯科医師と歯科技工士の立場違いに由来するものも多いのだ。

2.   税法上、歯科技工はサービス業に分類されている。

医療もサービス業とされているのであろうが、私はそこに違和感を覚える。 医療は医療、医療業とするべきであり、サービス業と認めれば、市場的な利潤追求を避けて通れないからだ。

医療法などでは保健医療サービス又は福祉サービスに言及しているが、利益追求を目的としたサービスではなく、公的なものとして国民に提供されるサービスとして規定されている事なのである。

歯科技工士の業務は当然ながら補綴物作成することである。 作ると言う行為が大半を占めるし、模型を受け取り、その上で作成し、決められた納期までに完成させて納めるという行為がすべてだと言っていい。

しかし、医療や歯科医療をサービス業と規定している事から、それに給される物品もサービスの一環と言う事なのだろうか。 単に、医療従業者は全てサービスの一言で括ってしまうと言うだけなのか。

患者さんや国民に対して、対等な立場なのであれば、技工士もサービス業で構わないとは思う。 だが、歯科技工は歯科医師が医療を行う過程で必要とされる行為を、技工士に委託しているわけであり、技工士は直接に患者さんからの委託ではない形になっているのである。

はっきり言って、歯科技工士は歯科医師の技工を下請けしていると言うのが正しいと思う。 その為に、制度や法では規定していない複雑な慣習や立場の違いと言った構造的な問題が起きてしまう。

3.  医療保険制度

医療保険制度に於いては、医療行為に対する報酬が点数制度として細かく規定されている。 そこには当然だが、各種補綴物の製作点数や、材料点数が設定されている。 そしてそれら点数が歯科医院の収入になり、院内ラボなら技工士の給料として、外注ラボなら外注技工料金として支払われる事になる。 点数がそのまま作成の対価として作成者に支払われるシステムにはなっていないのである。

医療の点数と言うものは実際に必要とされる単価の国際比較で言えば、十分の一以下である。 そんな非現実的な点数から、作成点数が満額歯科技工士に渡る事すらない。

医療は患者さんへのサービス提供になるが、歯科技工士は間に歯科医師介在する事から、委託されているとは言え患者さんへのサービス提供ではなく「歯科医師へのサービス提供」に変わってしまうのである。

医療保険制度は統制された経済であり、医療が公共へのサービスという観点で言えば、例え実費を請求できる自費診療で在っても、不当に利益追求に走れば、昭和40年代の差額問題のように社会問題と化すのは当然である。 節度とモラルが医療者には求められると言う事だ。

4.  歯科医師へのサービスとは何か

歯科技工士は委託技工を受注したい。 仕事を受けることが出来なければ収入も無い訳だ。 ラボ勤務や院内ラボ勤務であれば、技工士が仕事を受注する為に苦労するということは比較的少ない。 少なくとも、そこで技工をするという事で雇用される訳であるから。 しかし、勤務だからといって安泰ではない。 雇用者に必要とされるかかわいがられ無ければ、直ぐリストラである。 一人でといえども開業している技工士は先ず、受注先を確保する事が先決である。 営業力が物を言うところだ。

新規開拓や営業、外向ということになると、歯科技工士はその技術や知識以上に、営業の壁、料金の壁に直面する事になる。

印象や模型、形成に責任を持ち、患者さんに対して歯科技工士も対等、評価するべきは補綴物の品質だと言い切る歯科医師が何人存在するのだろうか。

まったく存在しないとまでは言わないが、確率は相当低いのである。

料金での要求、納期の取り方、形成や印象、石膏などへの配慮。 交合の考え方から、保健医療へのコスト意識までそれこそ千差万別である。

歯科医院の経営は圧迫され、医院経営に補綴の占める範囲が如何に多くとも、技工に向う経費削減という圧力は大きい。  歯科技工士はその構造的な制約の中で、如何に数を受注するかが生き残る術になってしまう。

患者さんに届かせる医療補綴物と言うサービスよりも、受注する為の歯科医院や歯科医師へのサービスこそすべてと言う状況になってしまったのだ。

5.  失われる価値と対価

歯科技工士の労働の価値や対価は、作成点数とも関係なく、また患者さんの支払う医療費とも関係ない、歯科医院と歯科医師に対しての相対的な力関係だけで作成料金である技工料金が決まって行く事になった。 営業やサービスということになれば当然だが。

技術や品質ではなく、歯科医院側の経費的なメリットが、大きく技工料金を支配している訳である。 納品された歯科補綴物の品質や組成、商品価値が、患者さんが支払う医療費に見合った物であるかは、歯科医院と歯科医師の判断に全てが委ねられている。

この状況が進めばどうなるのかといえば、集配を専門に行う営業ラボと言う業務形態が生まれる。 また、安さだけを追い求めれば、国内法の抜け道や恣意的な解釈を持って、無資格者雇用や海外委託技工と言う事態にまで繋がる。 

これは、国保や健保の月々の納付を続け、歯科医院窓口での自己負担分や実費支払いをしている患者さんから見れば、歯科補綴物の品質と費用はブラックボックスとなってしまう訳である。

そして委託される歯科技工士や歯科技工所は、歯科技工の本来の目的である、良質な歯科補綴物を作成し提供する事で、よって国民の健康と福祉に寄与すると言う目的を見失い、人間としての尊厳も収入も生活も失ってきたのである。

6.  歯科技工士の収入や就労の現状

今も技工を続ける歯科技工士の多くは、わずかな矜持と何よりも自分や家族の生活、生きる糧を人質にとられ、塗炭の苦しみを甘受している。

新卒で10万以下、30代前半で17万、40代でも25万の収入があれば御の字である。 自営業者で手取り10万などざらである。

一人の技工士が取引先を20も30も開拓し、駆けずり回って委託技工をかき集めそれで在られる対価が如何程になるのだろうか。

現在家族4人が普通に生活するのに必要な収入はどれくらいだろう。 定年になりリタイヤした年金暮らしの老夫婦でも月に25万や30万は必要だと言うファイナンシャルプランナーの老後設計などの話が良く出る。 年金ではとてもじゃないが生活できないから老後に備えて資金計画をと促す。

歯科技工士の場合は老後の話ではない。 今現在の生活の問題である。 家族4人も居れば、家賃食費、その他もろもろで30万以上は掛かるだろう。

手取り30万を得ている歯科技工士がどれだけ存在するのか。 しかもそれをごく普通の労働時間や社会生活を可能にした上で、得ているものが。

歯科技工は業としては歯科補綴物の作成だが、歯科技工士の実態は歯科医療へのサービス提供業なのである。 その実態は、法や制度、歯科医院の医療の現場を見ても、先ず見えてくることはない。 同業者間でのサービス競争、営業競争が激化し、歯科医院側はそれを当然と放置するか時に煽り、更なるサービスを要求する。 患者さんの為になるサービスを要求するのではなく、歯科医院と歯科医師へのサービスを要求するのだ。

そのサービス要求に答える為に、歯科技工士は更に利益を削り、時間と汗とを提供する事になる。

このような下向きへのサービス構造は、良質な歯科補綴物の品質と価値と言う一番大切な部分を、無視するか捨て去ることに繋がり、歯科医師や歯科技工士心の内に、「この状況や制度では当然、我々も犠牲者」という言い訳を当然とするようになっていったのである。

医療保険制度での歯科医療の診療報酬は過去何年にも渡って大幅に削られてきた。 制度発足時から、意図的に低くさえられていた点数は、患者数や虫歯の数が多かった時代には、それでも数で稼げたように思われるが、あまりの低さに歯科医師会や歯科医師は差額徴収に走り、それが社会問題化して国会でも叩かれると、自費という形であまり暴利と思われない金額での実費徴収で凌いできた。

しかし、患者数の減少や社会保障関係の費用切捨てと、実際には伸びない自費診療によって、保健医療への依存が歯科医院経営で如何に大きいかを思い知る結果となって糊塗できなくなってきた。 歯科医師会の旧来の手法は、賄賂や根回しによって保険点数の嵩上げを求めるなど、数々のスキャンダルを生み出すばかりで、要求どころか逆にペナルティとして制度やルールの厳格化、医療費削減に花を贈る結果しか生んでいない。

そう言う中で、限られた歯科補綴物の作成点数は医療行為への対価と言うより、歯科医師と歯科技工士のパイの取り合い、政争の具にまでなってしまったのだ。

わずかな利を求めてのサービス競争の過酷さから品質を無視し、歯科補綴物の信頼や価値を貶めている歯科技工士の責任は大きいし、当然糾弾され淘汰されるべきだ。 そして歯科医師は患者の無知をいい事に品質の劣る歯科補綴物を平然と選択している。

7.  医療職と皆保険制度

医療職の矜持を保ちつづけるのは、現行の医療保険制度や点数設定では容易な事ではないのだ。 追い討ちを掛けるように、米国保険業界からの日本の保険や医療市場開放圧力が、年次改革要望書となり昨今の構造改革にそのまま移されている。 歯科医療業界はその荒波に抗う術を持ちえていない。

村社会の互助制度ともいえる、皆保険制度は世界に誇れる日本の宝であった。 それが今、米国に奪われ様としている。 歯科医療業界の家長として戦うべき歯科医師会は、歯科衛生士や歯科技工士という家族を、家長の権利や利益を脅かす存在として見て来た故に、外に対しては何も言えないでいる。 皆保険制度を自ら壊してしまった罪は大きい。

医療への低評価と切捨てが、保険医療制度への不信や医療職のモラル低下を招いている事に、社会は気付かねばならない。 歯科医師のモラルの低下を招き、経営困難は、下請けである歯科技工士のただでさえ弱く悪劣な環境を生み出しているのだ。

今や、制度改定や構築に向けて正論を伝えようという機運がおきていることが、少しづつだが社会にも伝わり、業界にも漣を起こしている。

しかし、制度や法が良くなり、整備されたからと言って、歯科医師と歯科技工士の関係が明確に改善されると言う保証も何もない。

歯科医療での補綴物の価値の取り合いという事や、歯科技工士の行為が歯科医師へのサービスと言う状況に何の変化も無ければ、歯科技工士の過酷な就労環境やサービス競争は無くならないだろう。

歯科医師会や多くの歯科医師は、患者さんに対しては対等だと言うだろう。 しかしそれが表向きのリップサービスなのは、歯科技工士が肌で感じている事だろう。 なぜならば、対等といった口で、歯科技工士には売り物があるのか、サービスは当然だろうと続けるのだ。 繰り返して言うが、歯科医師が求めるサービスは患者さんに届くサービスではない。

患者さんに届くサービスなのであれば、補綴物そのものにある。 歯科技工士はそれ以外のサービスを求められ、それが当然だとされてしまう。 養う家族や生活がある者にとっては、断れない要求だというのに。

こんな状況では対等であるとか委託だというような奇麗事ではなくなる。 法や制度といったものではなく悪しき慣習、ヒエラルキーが支配しているのだから。

それを改善する道は、何も現行の制度を糾弾しなくてもできることなのである。

歯科技工士の立場を、歯科医師へのサービス業という立場から外せばいいだけである。

8.  歯科技工士本来の立ち位置への提言

歯科医療が存在しなければならない仕事である事は百も承知だ。 だが、それを言うなら歯科医師にしても患者さんや国民、歯科医療が無ければ存在できないはずだ。 そこには歯科技工士による補綴物や歯科衛生士の業務が無ければ成り立たない事も。 つまり、歯科医療と患者さんに対しては、皆対等なはずなのである。

歯科医師は歯科衛生士や歯科技工士が、歯科医師にサービスする為に存在するのだという潜在意識を払拭していただきたい。

歯科技工士が届ける補綴物が、医療品として求められるレベルに無いと判断すれば、返却もしくは再製を命じて欲しい。 歯科技工士が良い品質の製品を患者さんに届けようとするのは当然の義務である。

歯科技工士が身を削ってまで歯科医師に対してサービスをせねばならない、歯科医療業界の構造、法の不作為、見えざる圧力を如何に改善するかが大事な事だと思う。

元より低い点数と医療費が削られ、分配できるような金額ではなくなっている。 サービスを収入とするのであれば、点数は、サービスを実際に行った者に直接渡るように配慮しなければならないはずだ。 中間搾取がなされていなくても、医療費の低下や介護保険の低下は、医療職や介護職を離れさせて行くではないか。

歯科医療においても、サービスの対価は公正公平に届くようにしていく必要がある。

歯科技工であれば、院外への委託技工は直接請求を認めるべきだ。 対等な立場で院内と院外のラボとが互いに品質や精度をチェックしあい、責任の所在を明確にする効果もあるだろう。

これは、歯科医師や歯科医院へのネガティブな世論を払拭する効果も見込めよう。

【終わりに】

歯科医療や歯科技工士の現状が社会に伝わるようになるにつれて、歯科技工士の減少にアクセルが掛かったように思う。 一昔前であれば技術に限界を感じて止めていったものだ。 今は、収入や就労環境、何よりも人間の尊厳を保てない職業としてい忌避されているように思う。

歯科技工士専門学校は定員割れが続き、廃科や廃校も相次いでいる。 20代技工士の卒後五年定着率は1割台になり、年代別就労人口を見れば、20代30代の落ち込みは驚くばかりである、 今や、歯科技工士の中心となる年代は40代50代が占めているのである。 この年代、まだまだ子育てなどでお金が必要な年代であるが、月収平均は25万在るかどうかであろう。 日曜や祝日もないような生活をしてその収入である。  仕事への責任感と、生活を人質にとられ、年代的にも転職は容易ではない。

こんな歯科技工士だけが残っている業界に患者さんや国民の歯科医療への信頼や期待に答える力があるはずが無い。 歯科医療に未来は無いのだ。

隗のメンバーにも「技工問題 私の視点」を読んでいただきました。 ご意見をいただきましたので、了解を得てここに掲載します。

読ませていただきました。  自分が感じた点を、差し出がましいことでありますが述べさせていただきます。  まず、技工士法ですが士が付こうが付くまいが、もともと資格を定めた身分法と、技工所等の規定を定めた業務法が含まれた法律です。 ちなみに、歯科医師法は身分法であり、業務法は医療法になります。  したがって、技工法に士が付いたからといって、全く変わりません。 ただ、学校法人の技工学校が認められたことと、技工業務の拡大に関する法改正をさせないという歯科医師会との覚書を交わされただけです。  つまり、士が付いたことにより身分法になったということはありません。  つぎに、医療保険制度において保険点数により医療提供の単価を決められておりますし、提供側の自由な報酬を得ることが出来ません。  その為に、医療施設においては歯科医師優遇税制があり保険収入のほとんどが経費と認められ、わずかな税金ですみますし、消費税、個人事業税が免除されております。  一方、歯科技工はどうかと言いますと、保険点数により技工料金が抑制されているにもかかわらず、税制面も一切の考慮はされておりません。  7対3により、技工料金の上限を決めた格好となり、さらに抑制されるという形になっております。  全くの中途半端であります。  サービス業というのなら、きちんとした医療保険制度の中で認められているべきであり、それに伴う優遇制度も与えられるべきであると考えます。  一方、技工所経営者はきちんとした原価計算により、技工料金を決めるべきであり、その為に従業員に対してきちんとした報酬を払うべきでありました。  当たり前ですが、条件が良い仕事場であるのなら無理をして会社をやめ自立する必要は無いはずであり、原価を下回った技工料金が氾濫することは無いはずです。  保険制度により、中医協に交渉することも出来ず(本来歯科医師委員が全体を考え交渉しなければならなかった)、報酬額を決められてしまった。  今となっては、どうにもすることが出来ず、G3さんの言うとおり、アメリカのいうとおりの方向に動かざるを得なくなっております。  保険制度という枷がはずれ、本当の自由競争が持ち込まれるのでしょう。  当然、金の無い人間は医療を受けることができず、わずか80ドルの抜歯代も払えずに死んでいく世界になるのでしょう。  国民はそのことを理解できず、気が付いたらそのような状況になってしまうのでしょう。  しかし、マスコミによって煽られ、本質を伝えられない国民に責任はありません。  この少子高齢化において、歯科医療が生き残る道はほとんど無いのでしょう。  ましては、末端の歯科技工士なんてあっても無くても、小さなことなんでしょう。  国内に作るものがいなくなれば、海外に出すのでしょうし、よっぽど国民が困らない限りどうでもいい問題なんでしょう。  政治家、官僚、マスコミ、自分たちだけがおいしい汁を吸えるかぎり、国民が困ろうが知ったことは無いのでしょう。  この国は、すでに腐っておりますし、もう手遅れかもしれません。  食糧、燃料、安保、アメリカ合衆国の51番目の州になることが、一番生き残っていく道かもしれませんね。  話がずれてしまいましたが、歯科が一本化され、マスコミを味方につけなければ崩壊でしょう。  歯科医師会、技工士会がいがみ合っていて良いわけないのに、トップはどう考えているんでしょうか。残念です。


以下はみな歯科のメインでないメーリングリストの中で始まった議論です。
その後メインのメーリングリストにも飛び火しました。
それぞれの視点で書かれています。これから大きな問題になるでしょう。
ですからこのまま埋もれさせないで公開いたします。


みな歯科会員B  (歯科医師)

私が「私の視点」を反論と共に掲載したいと書いた最大の理由は「現実がどうあれ」ある程度の数の歯科医が技工士 の業務が歯科医へのサービスという認識がないことです。

ちょっと話をそらしますが、今多くの歯科医が患者に対して過度なサービスを要求されていると感じています。 しかし患者は「それくらいは当然のこと」であり、サービス業であるのなら、もっともっと患者の為に尽くせ、しかし値段はさげろと要求するでしょう。 もちろん、これは少し観点がずれているかもしれません。しかし、現状では患者への提供は歯科医が直接行うことであり、技工士の仕事に関しては法的にも患者の意識的にも歯科医が責任を負う状況にあります。つまり、もしいい加減な印象やバイトで 精度の低い技工物となった場合でも、チェアサイドになんの問題もなく技工側の問題で精度の低い技工物となった場合でも、 それを装着した歯科医が責任を負うことになります。

つまり直接の窓口が歯科医院であるかぎり、技工士が患者さんに対して直接的な責任を負うことはないわけです。

そうなると歯科医は「自分のミスを棚にあげて」もしくは「自分のミスに気づかなくて」も技工士さんに「これ再製してよ」という義務が生じるわけです。もちろんこの場合「先生の印象に問題があるので、取り直してもらわないと要求にお応えできません」というのが正しい技工士の姿勢であり、それが下請けの辛さで「言えない」というのも理解できます。

ですから、もし直接払いが実現し技工士が法的にも患者の意識的にも責任を負うというコンセンサスができるのが一番すっきりすると思います。

しかしこれは法整備が非常に難しく、中西さんが議員になったくらいでは実現は不可能でしょう。少なくとも30人くらいの議員団をつくるくらいでないと実現しません。

ですから、現実的には何をすべきか?感情論はダメなんです。歯科医が技工士を交渉の道具に使おうとしているのなら、逆にそれに乗っかり「クラウンの技工料は8000円なければ技工士は資格職業として成り立たない」と言いつづければ良いわけです。 そして8000円の技工料を確保するためにはクラウンの保険点数が1600点必要だと歯科医に言わせれば良い訳です。

衛生士の給与だって他の業種に比べ決して高いものではありません。現時点は衛生士は「私の給与は先生が決めてる」と大多数の人が感じてるでしょう。もちろんそうなんですが、これがもし衛生士の時給は2000円必要だ。だから衛生士指導は経費を含め150点必要なんだ。と主張すれば衛生士に時給2000円を払わざるを得ないわけです。逆にそれをしない歯科医院には衛生士は勤めなくなるわけです。

歯科医師が搾取している現実があるのは認めます。しかし、それをさせない為には歯科医師の意識改革も必要ですが、技工士の意識改革も必要です。

みな歯科会員C  (歯科医師)

今、再診料38点、小臼歯FCK600点、装着料45点、セメント料16点、補管100点  合計799点(7990円)ですよね。3割負担で2400円の負担になります。

ここで今のFCKの技工料金を2500円とします。これを8000円にUPするとします。(ここでは7:3問題は考えません。)差額は、5500円です。

技工料金が上がっても、歯科医院の収入が減らさないようにするためには技工料金が上がった分だけ、FCKの点数も増やす必要があります。7990円+5500円=13490円となります。(実際には、歯科の場合には価格弾性が高いことを考えると、負担が増 えると受診を控えるということが起こりますので、歯科医院の収入は減ることになるでしょう。) 3割負担で、負担金は4050円になります。
4050円−2400円=1650円。
つまり、患者負担は1650円UPということになります。約70%UPです。

一番の問題は、これに国民に納得していただけるかということだと思います。これまでと同じ治療を受けて負担金が増える、これでは決して納得していただけないでしょう。医療の質が上がるなら、あるいは納得してくれるかもしれません。「歯科医はこれまで低報酬でやってきたから、UPさせてくれ」こんな理屈は100%通るわけはありません。
「何言ってるんだ。今までそれでやっていけたんじゃないか!」

これまでの保険歯科医療・・安く、ほどほどのものを、だめになったらやり変えましょう、、に慣れてきた日本人がこれから抜け出すのは大変なことです。(こういうのが日本人の気質ですか、、、)

話は変わりますが、、、、
FCKの技工料金を8000円にしたとして、果たしてそれに応えるだけの技量が歯科医にも、歯科技工士にもあるのでしょうか?(個々の話ではありません。全体としてです。)

怒られそうですが、今の患者さんの口腔内に装着された保険FCKには、8000円の価値を見出せるような技工物ははっきり言ってありませんよね。今2500円でFCKを作っている技工士さんが、明日から技工料金を8000円にするからといってもそれに対応できる、知識とテクニックを持っているでしょうか?わずかな技工士さんだけではないでしょうか。製作時間をかければよいものが作れるわけではありません。

えらそうなこといいますが、8000円のFCKを作るにしては、多くの技工士さんは力不足と思います。(歯科医師もですね。)きちんとしたものをワックスアップ出来るためには、抜歯をして、SRPをして、抜髄をして歯牙の歯根までの解剖学的形態を把握しないと無理なんです。
顎関節症を治療してみて、あるいは総義歯の咬合調整で吸着具合が変わることがわかって、、こんなこと経験しないと無理なんです。
咬耗の具合と顔貌には関連がある、、、いろんなこと、、
ブラッシング指導してはじめで清掃性が分かるんです。(歯科医療において、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、患者さんがすべて対等になることもありえません。対等ではなくて、調和を図るべきなのです。ハーモニーです。)
やっぱり歯科技工というものは、本来はすべて理解した歯科医師がすべきものなんです。

現実には、歯科医師はもっともっと歯科技工士を教育すべきなのです。歯科技工士ももっと歯科医に、口腔のこと、歯のこと、咬合のこと、歯周のことを求めないといけなのです。勿論歯科医師も、歯科技工を勉強、理解しなければなりません。

ですから、もし直接払いが実現し技工士が法的にも患者の意識的にも責任を負うというコンセンサスができるのが一番すっきりすると思います。

これはひとつの理想なのでしょうが、今の日本ではまだ環境が出来上がってません。これが出来るのはほんの一部の歯科医師、歯科技工士だけでしょう。今の段階でこれを導入しても苦しむのは歯科技工士であり、迷惑を被るのは国民であると思います。

みな歯科会員D (技工士)

問題がだいぶ整理されてきた感じもあり、僕の現状を省みれば「そのとおり!」といったところです。たしかに制度と個の問題は別に考えるべきと思います。書かれてる話はほとんどの技工士が避け得ない問題で、歯科医との関係の問題があるがゆえに制度が変わっても、いやはっきり言えば、保険点数が今の10倍になろうとも、たぶん下がった技工料はあがる事はないとかんじ、ただただ日々を生きるのみになっている技工士はかなりの数いるのは事実です。技工士会の選挙活動の障害も、つきつめればそこだろうと思います。

ただ、あえて個人的なことをを抜きにして無理にでも客観的に見ると、技工士はこの関係の改善を歯科医の個人的資質にゆだねすぎてはなかったかと僕は思います。

ちょっと話がそれますが、みな歯科には技工士に理解のある先生が数多くいます。だから「理解のある先生を探せ。」や「良い関係を築いている技工士と歯科医もいるんだから、そうできないのは努力が足らないのでは?」といった類の意見も一理はあるとおもいます。

ですが、理解ある歯科医はあくまでその歯科医個人であり、いま技工士搾取で利益を上げている歯科医を変化させるという事とは全くぜんぜん別の話。となれば当然「理解ある歯科医とめぐり合う。」が改善の道となりますが、就業地などのことを考えると相当運不運に左右されます。おまけににめぐり合ったとして、新規ならともかくほぼ間違いなくそういう歯科医は、今取引している技工士を大事にしてますので、横入りできる確立はほとんどゼロでしょう。

何を言いたいかというと、技工士と歯科医が良好な関係を築けるかどうかは、技工士の技術や努力が1ぐらいで99は歯科医がそういった資質(思想?理念?)を備えているかどうかに左右されるという、さながらギャンブルといった現実があるという事です。

脱線ついでに、これが根本にあるため、「腕上げて自費に行けば良いじゃない。」が今いる患者を見捨てることにつながるわけです。自費をとるというのも、今いる歯科医から自費を出す歯科医に乗り換えるを意味し、自費は良好な関係をきづける歯科医ととおもうと、上の巡り合いのギャンブルがはじまるわけで、まず今の患者がいける範囲内ではいないはずです。

話を元に戻しますが、技工士はこのように巡り合った歯科医しだいですべてが決まり、その行き着いた先が8割にも近い離職率というわけですから、歯科界の現状はわかろうというもの。 

ですが、最初のころ言ってたように、技工料を正当な支出として歯科医の保険料を底上げする理由につかってもらうとか、そういった「仲間である状況」を作る努力が、技工士には足らなかったのではと思うのです。

なんというか、適正料金も対等な立場も要求としてはまっとうで、これについて異を唱えるのは、ちょっと本気で社会勉強を一からやり直すべきと言い切れるぐらい正しいですが、技工士は「会社」もしくは「商売人」としてすべきところの大部分を歯科医の存在を理由に放棄してるきがするのです。もっと直接的にいうと、歯科医に「戦力」とされる努力を技術以外にもすべきだったので は、と。(技術は基準が歯科医の主観しだいなので、これもまた個々しだいとなる。)

僕が何を思ってみな歯科に参加したかは、いまさらなので省きますが、歯科医とパイを取り合っても、そもそものパイが増えないかぎり技工士の取り分も増えないという理屈はどんな立場の人もお分かりでしょう。もちろん、これと技工士からの搾取の正当化は全然別の話ですが、ある意味では技工士もまた歯科医を追い込んだ原因をもっている事も、考えねばならないのではない かと思います。(業としての歯科医の孤立化)

これは技工士とかいうより、会社の取引関係としてみたはなしで、医療問題でなく経済問題の話になると思います。そのせいか、あまり歯科医技工士問わず、あまり理解を得たことがないので、ちゃんと伝わってるか自信ありませんが、実はかなり大きい問題ではないかと思ってます。

……ほんと、書いてて自分でも説明できてないきがしてきたので、ここらで失礼します。

みな歯科会員E (歯科医師)

公的保険の技工に話しを絞って考えてみましょう。国は低価格を求め技工士は正当な価格を求める。その中間で歯科医が搾取だダンピングだと言っても小さい問題だと思います。(問題だけどね)

なぜならば7:3なんて外して全てをフェアにというならば、当然出てくる結論は技工費用の入札ということになります。あるいは完全に国のコントロール下に入り抽選で指定する。社会主義的な構造を作るか。

こじれるほどに現実的なのが入札の導入ならば上限ありの下限無しで自由競争をやる事になる。これは大会社が勝つか、さらなる低価格を受け入れた個人が勝つかの悲惨な戦いになるでしょう。診療にしても自費で設備や基準を高くして、結果的に保険のレベルが上がるから医療の質があがると国は考えてる。(こじつけだけど)公的医療は余力でやれという理屈です。 今回のシンポジュウムが終わる時に、シンポジストに渡したいと考えているのは結論のある物ではありません。それは技工シンポの時にやるべき事です。いまやるべき事は、それぞれの勤務の立場からみた技工士と言う存在の問題点を知らせる事ではないでしょうか。

いろいろな資料は既にあります。シンポジストも見ているかもしれないけれど、それは改めてプリントして渡せばいい事。みな歯科の少ない人数で独自のデータとして渡せるのは、自分たちの立場から見た技工士の姿ではないでしょうか。

そして大組織ではない、いろいろな視点がある事を知ってもらう事が大事なのではないでしょうか。それをシンポジストに出したらどうかと言っているのです。


  • 書き込む場所複雑です。技工アンケートの場所の技工士さんの見解とここでの見解かなり大きな差があります。少し整理できませんか?すなわち、土俵が違います。ばらばらな土俵で別々の認識結論、何故このようになってしまうのでしょう。 -- 匿名? 2007-06-26 (火) 20:56:41
  • 色々な話が書き込んでありますが、一番の問題は安い補轍物を仕入れて、国に高い補轍物代を請求する詐欺行為のシステムじゃあないですか? -- 話がおかしい? 2009-10-29 (木) 21:16:05
  • 安い・・・て言われても・・・。料金表を持ってくるのは技工士サイドなのですが・・・ -- 2009-10-29 (木) 22:51:28
  • 40年技工士やってきた答えは技工士という仕事を日本から消す、今後は中国にネット使って格安で作らせ浮いた保険点数を健康被害が起きた時の保証に回すこれがベスト。技工士居なくなったらスッキリするよ、あと介護士も低所得職業を何とかというよりこれ以上被害日本人を出さない為にも無くすんですよなんとかなりますよ、その程度の職業ですよ。何を議論しても解決なんてしませんよ人間社会は搾取社会なんですから、無くなれば解決します。石炭労働者のように居なくなっても誰も困ってないでしょ。 -- 技工士? 2017-11-04 (土) 00:00:49






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Last-modified: 2017-11-04 (土) 00:00:49 (18d)